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  • 執筆者の写真山本雄士ゼミ学生スタッフ

開催報告:2020年度第6回〜医薬品・医療機器開発のジレンマ〜

更新日:2020年10月29日

10/17(土)開催の第6回山本雄士ゼミでは、半年ぶりに対面でのゼミを再開いたしました!オンラインで発言・質疑応答が可能な双方向型配信も併用したハイブリッド開催です。対面での入場者数を制限し、座席の間隔を空けるなどの制限付きながら、表情でのフィードバック、ジェスチャーや体の姿勢などの、参加者の方々がその場にいらっしゃることで初めて生じるnon-verbal communicationを含んだ熱気が日本橋に戻ってきました。対面15名・オンライン25名の計40名の方にご参加いただきました。

さて今回は、破壊的イノベーション論で有名なクレイトン・クリステンセン執筆によるケース、Eli Lilly and Company: Innovation in Diabetes Careを基に、製薬ビジネスの本質に迫って行きました。


まず、リリー社が製薬ビジネスで提供する財やサービス(測定器、インスリンペンなど)を、事業での重要度と稼ぎシェアの二つの軸に分けて、マトリックスに当てはめるディスカションを行いました。さらに、リリー社の中でのインスリンの販売について、従来使っていたボトル売りと、ペンとカートリッジ売りでライバル関係になってしまう(カニバリゼーションcannibalization:ある自社の製品が、自社の別の製品と競合・侵食すること)ことなども論点に挙がりました。


インスリンの作用持続時間の長期化や携帯血糖測定器の開発など、自社の製品を進化させていったリリー社ですが、単に製品を改良するだけでは十分ではないという意見も出ました。重要なのは、提供側の視点にとどまらず、患者さん側の視点に立つこと、患者さんにとってベストな製薬ビジネスを考え続けることにあります。この「患者さんにとってベストだと思っていること」という部分に、イノベーションのジレンマが潜んでいます。現在患者さんとして製品を消費している人と医療提供者の声に耳を傾け、持続的な技術革新を続け、安定した利益を出している「優秀な」製薬企業は、既存顧客の声に熱心に耳を傾けるが故に、医療につながっていない多くの潜在的患者さん(糖尿病の基準を満たしてはいるが、医療機関を受診したり薬を服用したりしていない人)の求めていることを見落としてしまう、というものです。さらに、「運動や食事をあれこれせず、糖尿病のことなど考えたくない」という潜在的患者さんのニーズを満たしつつ糖尿病のコントロールを行うことが可能になる破壊的イノベーションの登場によって、製薬企業・医療提供者・患者さんをめぐる産業構造の変化も生じるのではないか、という議論でディスカッションは締めくくりとなりました。

またゼミ終了後には、物理的距離の確保に注意しつつ、対面会場を30分ほど開放して先生・スタッフと参加者の方々の交流の時間を取ることができました。医学生から先生へのキャリアに関する個人的な質問や、参加者の方同士での学びの感想の共有など、直接会うことでしかできない対話の機会が生まれました。その後には、前回まで同様にオンラインでの懇親会も開催しています。


オンライン配信の技術については、参加者の方が先生とアイコンタクトが取りやすくする、オンライン参加者の方と対面会場の雰囲気を共有しやすくするなど、今後の課題を参加者の方々からフィードバックとしてご指摘いただきました。オンラインでも対面と変わらないディスカッション経験を実現できるよう、一層の改善に努めてまいります。


次回は11/14(土)、「プライマリ・ケアの革新から考える医療戦略の全体像」。米のクリニック・グループの事例から、理想のプライマリ・ケアの姿とその実現のためのマネジメントの課題を議論します。詳細と参加登録はこちらから。是非ご参加ください!

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