• 山本雄士ゼミ学生スタッフ

教科書紹介②「医療イノベーションの本質 破壊的創造の処方箋」C. クリステンセン他著

医療コストを削減しながら、高い医療の質とアクセスを両立する。このために、医療提供者、保険者・雇用主、製薬企業、医療機器メーカー、医学教育機関、政府といったプレイヤーがどのように医療へイノベーションをもたらすことができるのか。破壊的イノベーションの理論で世界的に有名なハーバード・ビジネス・スクールの故クリステンセン教授らが紐解きます。

筆者らが指摘する医療の破壊的イノベーションの構成要素は、「複雑な問題をシンプルにする牽引技術」「低コストで革新的なビジネスモデル」「これら2つと経済的に一貫した医療業界の構造」。これらが同時に動いて初めて、低コストで良質な医療が実現できるといいます。

では、冒頭の医療の各プレイヤーは、どのようにして医療の破壊に寄与することができるのでしょうか。この説明にあたり、医療業界に向けられた研究の蓄積と筆者らの観察を基に、「医療のビジネスモデルの3類型」「疾患の病態理解と治療は、直感的医療から精密医療へと進歩する」「医療技術の革新は、病院などに集中していたソリューションを消費者(患者)の側へ分散させる」などの図式が、豊富な実例や類比とともに展開されます。

本書だけでも十分に読み応えがありますが、実は本書の内容は、クリステンセン教授が「イノベーションのジレンマ」「イノベーションへの解」「ジョブ理論」などの著書で提示した説明のモデルを医療に応用したもの。これらの本も併せて読んでみるとより立体的な理解が得られるかもしれません。


「医療費をどのように使うのか」を論じた本書は、その反対側の「医療費をどこから確保するか」だけに注目が集まることの多い日本の議論の中で、新鮮な切り口を与えてくれるのではないでしょうか。日本が目指すべき医療の姿を考える上でおすすめの1冊です。


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